さらにカリフォルニアでドミナス・エステートを立ち上げ成功させた、
ワイン界のレジェンド、クリスチャン・ムエックス氏。
30周年記念のドミナス最新ヴィンテージを引っ提げて来日しました!
1946年生まれ、御年70歳のクリスチャン・ムエックス氏。
アートや、建築、文学に造詣の深い、
教養溢れるワインメーカーとして知られています。
クリスチャン氏は1970年から2008年までペトリュスをマネジメント。
兄が正式にペトリュスを相続した後も、2011年まではワインづくりを支えました。
そんな彼がドミナスを立ち上げたのは1982年。
実は1968年からカリフォルニアの名門・デイヴィス校で
ワイン造りを学んでいた時に魅せられたのが、
現在ドミナスが造られているナパヌックヴィンヤードでした。
彼はその時「この場所だ。私はここでワインを造るべきだ」と悟ったと言います。
クリスチャン氏は一度はフランス・ボルドーに帰国し、
ペトリュスをはじめとするファミリーのワイン造りに携わりますが
カリフォルニアワインへの情熱が忘れられず、
ジョイント・ベンチャーでドミナス・エステートを設立。
94年にはエステートを買収し単独所有となりました。
今回お披露目されたのは、
ファーストヴィンテージから30年周年を記念して
リリースされた特別ラベルのドミナス。
こちらは南アフリカの現代芸術家、
ウィリアム・ケントリッジ氏が手掛けた
クリスチャン氏のポートレイトがモチーフ。
実はクリスチャン・ムエックス氏には、
ボルドーのジャン・ピエール・ムエックス社で働く長男のエドアルド氏と、
南アフリカで獣医をしている長女のシャルロットさんがおり、
同国の画家が選ばれたのも偶然ではなさそうです。
ドミナスは、1983年~1990年までクリスチャン氏のポートレイトを
あしらったラベルでリリースされていた時期がありましたが、
クリスチャン氏は「ポートレイト入りはこの2013年が最後。」
と照れながら語っていました。
今回ドミナスのワイン造りについて伺った中で
特に興味深かったことが「ドライファーミング」について。
これは灌漑をしない、つまり水を与えない農法で、
これによってブドウの樹の根が地中深くに伸び、
「テロワールが味わえるワイン」が生まれるそうです。
【クリスチャン氏が手書きしたドライファーミングの図】
(左)ドライファーミングをしたブドウの樹。地中の水を求めて3mほど根が伸びる。
(右)灌漑をした時の根。表面に撒かれた水を求めて根が上に伸びてしまう。
こちらが2013年のドミナス。
※近日中に発売予定
クリスチャン氏はこの2013年のドミナスについて
「これまでの人生で手掛けたワインの中で、
トップ10に入る偉大なワイン」
と表現。クリスチャン氏が手掛けたすべてのワイン、
つまり歴代のペトリュスもすべて含めて、
トップ10に入ると自信をみせる傑出した1本です。
濃厚で輝きのあるルビーレッド。
「黒いワインは造らない」というクリスチャン氏のポリシー通り
凝縮していながらも、透明感のある美しい色合いです。
クリスチャン氏が「エクスプロージョン=爆発」と表現する
インパクトのある鮮烈なフレーヴァー。
例年以上にマスキュリンな印象で、
日本文学好きのクリスチャン氏曰く、
「逞しくて男性的でヴァイオレント。まるで谷崎の文学だね。」
強烈な風味がいつまでも続く長大な余韻。
まさに30周年記念に相応しい偉大なワインです。
続いてこちらはセカンドワインのナパヌック。
ナパヌック 2012年
10,000 円 (10,800 円 税込)
※2013年は近日中発売予定
ファーストと同じ、ナパヌックヴィンヤードから
とれたブドウを使用して造られます。
【クリスチャン氏が書いた畑の図解】
畑には3~5%の傾斜がついていますが、
畑の上部(標高230m付近)に位置する区画の約2/3がドミナスに、
若木の1/3がナパヌックに使用されます。
畑の中腹は、1/3がドミナス、2/3がナパヌックに。
そして一番標高の低い畑のブドウが、サードであるオテロに回されます。
とは言っても「どの区画から収穫したブドウでもよいワインを造りたい」
との考えから、ワインごとに明確に区画を分けてはいないそうです。
試飲した2013年のナパヌックは、深みのあるダークレッドの色合い。
赤系果実と黒系果実が混ざりあったアロマが特徴的で、
凝縮感がありながらも、口当たりはとてもシルキー。
新樽率は20%と低めで、クリスチャン氏のすべてのワインに共通するように
樽の風味はほとんど感じず、豊かな果実の風味が口いっぱいに広がります。
アントニオ・ガローニ氏から
「ナパ・ヴァレーの中で最も素晴らしいスーパーセカンドワインの1つ。」
と賞賛される1本です。
最後に、サードワインのオテロをご紹介します。
オテロ 2011年
4,800 円 (5,184 円 税込)
クリスチャン氏が書いた畑の図からもわかるように
ドミナスとナパヌックと同じ畑の別区画から収穫した
100%自社畑のブドウを使って造られるサードワインです。
実はこのワイン、エノテカが、
「日本人のために、和食にも合う、
リッチ過ぎないカリフォルニアワインを造って欲しい。」
とリクエストして生まれた、日本のためのワイン。
クリスチャン氏の奥様、シェリーズさんがデザインしたラベルには、
アルファベットの「O」が大きく配置されており、
これは日本の国旗である日の丸をイメージしているとか。
当初は日本だけで販売していましたが、
現在は世界各国で発売し、好評を博しているそうです。
2011年のセパージュはカベルネ・ソーヴィニヨン100%。
深みのあるルビーレッド。赤系果実のアロマに清涼感のあるハーブ、
生き生きとしたジューシーな果実味と酸が感じられる
飲み心地のよい味わい。
カリフォルニアワインの頂点に立つ
ドミナスやナパヌックの片鱗がお得に味わえる1本です。
最後に、クリスチャン氏が考える偉大なワインとは?
「どんなシチュエーションにも、どんな食事にも合わせられるワイン。
これはワインだけでなく、人間も言えるのでは?」
なるほど。
ちょっと哲学的な答えですが、
どんな相手にも謙虚に接するクリスチャン氏の人柄に触れて、
偉大なワインが生まれる秘密が少しだけわかりました。
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